pontaのヘッドホンブログ

ヘッドホンについてわかってきたこと

2024-06-20

今回の記事は雑談であり、考察であり、愚痴でもある()なかなか面倒臭い内容ですが、時間のある時にでもお付き合いいただければと思います。

昨年の暮れ頃から、色々な値段帯のヘッドホンを聴いてみて、メインのヘッドホンをずっと探していました。ただ、今の所、結果はみて分かる通り、全く決まらずグダグダと彷徨っている状況です……。それは私の優柔不断と資金力不足が一番の原因ではあるのですがそこを一旦棚に上げさせてもらって、 いろいろと考えています。

その中でいろいろとわかってきたことがあったので、それらをつらつらと書いてみることにします。

ヘッドホンの音質に対する統一的な整理

まず考えたのが、試聴させてもらったヘッドホンそれぞれに対する感想というのは存在するものの、私の中でそれらを統一的に整理できていない、ということです。これはやろうと思えば片付けられそうなので、過去の試聴をいろいろ振り返ってみて、以下の二つの傾向を考えてみました。

その際ですが、もともと音質項目を品質よく網羅している機材にヘッドホンを繋がないと、機材のブラインド項目がそのままシステムのブラインド項目になってしまい、こういう整理をするのは難しいなと思いました。つまり、ハイエンドとか何だと尻込みせずに、ちゃんとした機材で聴かせてもらわないと分からないということです。

こんな機材の限界を試すようなことする必要があるのかと言われると一瞬悩みますが、つまりは音楽の楽しみが自分のシステム、機材(とそれらを選んだ自分の耳)に律速されるということなので、ここをある程度追求することは意義はあるのかな、と思っています。

情報量取扱能力の世代前進性

まず何といっても、基本的に世代が新しくなるにつれて、扱える情報量がどんどん増えていく傾向を感じます。

例えば、HD650はだいぶ前からあるヘッドホンですが、HD660S2は、併売されつつも、HD650より最近発売された新しい世代のヘッドホンです。(正確に言えばHD660Sもありますが、これは聴き忘れたのでご勘弁を……)HD650は粗をうまくカバーしてはいるものの、扱える情報量としてはそこまで多くありません。対して、最近試聴HD660S2は、素出し感のある音作りになっており、より多くの情報量をより直接的に扱えるようになってきていました。

また、Utopia初代とUtopia SGの情報量追従性の進化は、ハイエンドヘッドホンを語る上では見逃せないポイントになると思います。初代もその当時ではぶっちぎりでしたが、SGになってからはさらに洗練され、スピーカーオーディオで使われるようなハイエンドDACにもそれなりに追従し、ヘッドホンオーディオの新しい世界を見出すきっかけとなっています。

情報量の追従性はヘッドホンにとっては(個人的にも一般的にも)まずいちばん重要な要素だと思っていますので、これは朗報だと思います。つまりは、自分のシステムのキャパシティや発展性に合わせて、その時々で程よいヘッドホンを選んでいけばいいわけです。

音質項目網羅の値段追従性

ここが割と悩ましくて、いわゆるエントリーからミドルエンド、ハイエンドと値段が高くなるにつれて、より多くの音質項目を品質よく網羅するようになるという傾向です。言い換えれば、値段が安くなるに従って、明らかにおかしいと思われる部分が増えていくということです。

どこの項目が足りていないかはヘッドホンによってそれぞれ異なるのですが、全ての項目が品質の高さはさておき概ねバランスよくまとまっているものを探すのは、結構骨が折れます。私が把握している中だと、エントリー帯〜ミドルエンド帯だとHD650やHi-X60、HDJ-X10などといったあたりでしょうか。ミドルエンド以降であれば、Clear Mg、Clear Mg Pro、などなど。ハイエンドで言えば、LCD-5、Stealth、Utopia SG、Caldera、SUSVARA、……。エントリー帯は数が多いので一見多く見えますが、割合で言えば、やはり値段が上がるに従ってバランスを満たす率は高くなっていくと思います。

もちろん、今挙げたヘッドホンたちにも微妙な音質項目や品質の高低は持ち合わせているので、それぞれの許容範囲やウェイトによって、選択は変わってきそうです。とはいえ、あまりにもバランスを欠くものを選ぶことは避けた方が良いと思います。また、そういう性質を安易に「個性」と呼んでしまうのは、その状態を認めてしまうことでヘッドホンの進化を止めてしまい、結果的に我々ユーザーに不利益を被ることになると考えているので、やめた方が良いと思います。

各ヘッドホンがそれぞれどういう項目をどの程度満たしていて、どの項目が欠けていると思うかについては、それぞれのヘッドホンの記事などをご覧ください。

この点に関しても、結局のところは自分のシステムのキャパシティや発展性に合わせて考えていけば良いわけですが、音質項目数と値段の明確なトレードオフ関係に上手い落とし所を見つけられない、というのが、私がメインヘッドホンを決められない原因なのかな……。

ヘッドホン評価の汎用性

レビューの汎用性の確保

ヘッドホンを試聴・購入する際、そのレビューというのは基本的に参考になるものです。もちろん先入観になってはいけませんが、そこは個人がよしなに差っ引いて考えるべきところです。そのレビューがどのくらい参考になるか、すなわちレビューの汎用性という観点は、レビューという行為を他人に少しでも役立ててもらいたいと願って公開する以上、必ず付きまとう命題です。

これを可能な限り担保するには、評価指標の多さと妥当感を持たせることで、読者が持てる引っ掛かりの部分が単純に増やしたり、新たな視点を与えたりすることが必要になると考えます。私自身もレビューを書かせてもらっている身なので、そこの部分は結構意識していて、お店や他の方のレビューを拝読する際も、自分にない観点を探しつつ読んでいたりします。

その中で、特にお店のレビューについては、専門店の人間が書いているはずというのもあるので、僭越ながらこういう観点を加えてほしいなぁ、とぼんやり思うことがあります。

よりわかりやすいレビューを目指すには

一つは、世代や値段に対応する音質の向上をきちんとアピールした方がいいのでは、ということです。その点を正しくアピールして、「価格相応の価値」というものを、売る側も買う側も意識できるような環境が健全だと思います。ここがひっくり返ると、何を参考に選ぶかという重要な指標の一つを失い(もちろんこれらが全てではないですが)、圧倒的に選びにくくなってしまいます。

ですから、アピールできるだけの聞き耳を、専門店の方々も鍛えていく必要があると考えています。その上で、買う側もシステムのキャパや伸び代(伸ばし代)をできる限り精密にシミュレーションしながら、ヘッドホンを選ぶということになるでしょう。つまり、買う側も聞き耳を鍛えて、シミュレーション力を上げていくことになりますね。

もう一つは評価指標の妥当性です。お店のポップなどで音質をうまくビジュアライズしようという試みがされていて、それ自体はわかりやすくなっていいな、と思っているのですが、一つ一つをきちんとみていくと、それは本当に妥当な指標なのか?と首を傾げることがあります。

例えば、音色の暖色、寒色を直線の両端において、その直線上の位置で音質傾向を示す、といったビジュアライズがあります。個人的には暖色寒色の他にも明暗、彩度などといった観点はありますが、この二つに関しては、軸の両側においても比較的違和感がないように思います。もし私の感性に合わせてビジュアライズを更新するとしたら、軸が三次元とかになるのかな、考えています。

このビジュアライズのポイントは、きちんと相対する二つの概念を一つの軸の両端に置いて図示するということでしょう。その二つの概念が本当に相対するものなのかは、きちんと検討が必要だと思います。

よく見る例で言えば、「楽器重視」と「ボーカル重視」などでしょうか。この二つは本当に対照的なのでしょうか。個人的には「ボーカル重視」というのは、特定の音像の大きさが正しくなく捌ききれないとか、奥行き的な音像の情報がない(あるいは聴取者が聞き取れない)、特定の音域が欠落している、などといった複数の特徴の掛け合わせなのではないかと考えています。そう考えると、「楽器重視」だって奥行き的な音像の情報が欠落していたり、特定の音像が大きすぎたり、特定の音域が欠落していたりなどなど、似たような、あるいはもはや同じような性質を持っていると考えられます。

そう意味で、この二つの概念を対比させる表現は、あまり適切ではないのでしょうか。つまり、「楽器重視」「ボーカル重視」という概念は、もっと観点を増やして考えてみると、結局本質的にはどこかに偏りがあったり、欠けていたりしているだけで、その傾向も実際は似たり寄ったりなのではないか、ということです。これでは、あまり参考にすることができません。

今後の動きはどうするのか

これらの事柄をひとまず飲み込んだとしてこれからどうするのかは、実はまだ考えている途中です。自分のシステムの伸ばししろをもっと上げる想定で性能の高いヘッドホンを買うのか、それとも今までのシステムの成長予想は据え置きで、そこにちょうどいいヘッドホンを引き続き探していくのか……。どっちがいいのかは人それぞれ(の予算……)ですが、どちらとも言わず宙ぶらりんなのは一番良くないような気はしています。他にやりたいこともあるので、目標だけは近いうちにさっさと決めてしまおうと思っています。

また、レビューに関しても今回は好き勝手に書いてみましたが、オーディオ文化をより良いものにするため、そしてその文化をより楽しむために、売る側も買う側も(もちろん私も含めて)継続的に努力したいですね、というのが全てです。最近は価格が高くなりすぎて辛いこともありますが、悲観したり冷笑してもしょうがないので、できることから前向きにやっていきましょう。