2024-05-14
またしてもお茶の水のオーディオユニオンさんになりますが、期間限定でMSB Reference DACのFemto 33仕様が展示されていたので、「これは」と思い、向かいました。
今回はなんと、Dynamic HPA(とUtopia SG)と合わせるという夢のような環境で、じっくり聴かせていただくことができました。流石に手が出る金額のものではないのですが、今後、オーディオ趣味を進めるにあたって色々と勉強になる試聴でした。正直「やばい」の3文字でレビューが終わってしまうくらいなのですが、なんとかない語彙を捻り出して文章にしてみましたので、参考程度にご覧いただければと思います。
なお、電源環境は詳しく型番は聞いていませんが、アキュフェーズのクリーン電源→PERFECTIONの電源タップ→純正電源ケーブルだそうです。また、トランスポートはネットワーク、DACとHPA間のインコネはワイヤーワールドを使っているとのことでした。
何より言いたいのが、全体として基礎性能がつよすぎて、ねじ伏せている感がすごいということです。電源環境やトラポ、インコネなど、このクラスの機材にしては様々なデバフ(となってしまう……)がかかっているにも関わらず、あらゆる項目について全然なんとかなっている、というか、すでに巷のヘッドホンシステムを一線を画します。なんというか、音源や演奏者の意図が本当にわかってしまうような感覚にここまでなったヘッドホンシステムは、なかなかないです。
もちろん、上記のシステム構成の特徴はある程度差っ引いて聴くようにはしていますし、Ref. DACとDynamic HPAに見合うきちんとしたチューニングがなされたシステムでの音はメチャクチャ気になりますが、そうじゃなくてもここまでの音が出せるのは、本当に驚きです。流石に本当に厳しい機材を繋いでしまうとその部分が如実に出てきてしまいそうですが、以下、一旦はこのシステム構成から、MSB本来の特徴と思われる部分をなんとか切り出せればと思います。
私の感想としては、S/Nが非常に良く、微細な描写に飛び抜けて優れ、恐ろしく滑らかな密度感、音の情報の立ち上がり下がりも恐ろしいほど速く精密、といった感じです。もちろんですが、ここで挙げていないその他の音要素も非常にレベル高くまとまっています。
ありきたりな表現ですが、聴こえるべきところは微小な余韻、雰囲気感のかなり細かいところまで出ており、それ以外はピシッと、でもごく自然に出さない、というのが徹底しているイメージです。その速さもDigital Directorを入れた時ほどではないにしろ「速さ」という概念を感じないほどに速く……しかし音の要素の連続性は、しっかりあります。総じて、S/N比が本当に高いからこそ恐ろしいほど細かい情報がちゃんと出てきてるのかな、と思いました。真のS/Nってこういうことなんだな……と、わからされた気分です。
そして、音の密度感や音の立ち上がり下がりの情報の出方は、おそらくクロックなのかなと思いますが、ここの出方が非常に精密かつしっかりしている印象です。Discrete DACではこの密度感などに課題があるなあと感じていたのですが、(海外のみ販売のPremierを除いて)次のReferenceになると2ランクぐらいは上がっていて、ここまで良くなるんだ、という印象です。ここはFemto 33クロック仕様が効いていそうですね。
本当に些細な欲を言えば、ここまでの密度や出方ができるのであればもっと細かいニュアンス情報なども、システムの構成・セッティング次第でもっと出せそうな予感はします。質感なども十分にでているとは思いつつも、もっと出たらどうなるのかと考えると思わずワクワクしてしまいました。
と、こんな感じです。正直ここまで来ると私の認知もだいぶ限界に近づいてきており、脳の情報処理がなかなか追いつかないために、分析的な試聴後はドッと疲れが出てきました。もちろん、聴き疲れするような音だということでは決してありませんが。こんな音が日常的に手に入ったらどれだけ幸せだろうと妄想しつつも、私の経済範囲を鑑みながら着地点を探っていきたいな、と考えています。その地点を探す一つの指針として、このMSB DACやHPAが意図する表現の勘所というのは非常に共感できるので、是非とも参考にしたいな、と思いました。
このクラスのDACの聴き比べなどをすればもっと確度の高いレビューになると思うので、そういう機会はなるべく逃さずにやっていこうと思います。