2023-05-05
beyerdynamic 社の最新フラッグシップ機である、T1 3rd Generation の中古を買ってみました。初代、2nd と比べて評判の悪い本機ですが、本当にそうなのか、前から興味がありました。
どういうところが評判が悪いのかを調べてみると、なにやらもやがかって多い低域が今までの T1 シリーズのイメージとかけ離れている、というような趣旨の論調が多いように見受けられます。調べた当時は、駆動力の高い機材でなんとかなりそうな印象を持ったので、結構楽観的に考えて購入に至りました。
実際どうだったかと言うと、そこも若干あれど、もっと根本的な問題を抱えているように思いました。総合すると値段なり、と言う言葉が合う気がしています。以下で具体的に述べていきますが、今回は購入なので環境は私の家のヘッドホンシステムです。そのうち改めてご紹介します。
まず、評判の悪さの中心となっていた低域ですが、量感自体は少々多いです。ただし、モヤモヤと全体にかかる印象ではなく、音像自体がやや大きい印象です。その定位が他の音像と被ったり、後ろにあるべき時に変なところで前に出たりなどしてややグチャグチャになることで、より目立ってしまっています。
音像自体はスッとして、比較的はっきりとした形が感じられ、周辺の微細情報の欠落が感じられます(うちのシステムの弱点の一つである、ヨルマ的強引な収束感を若干感じなくもないですが……)。その割に、響きが必要以上に長く仰々しく感じられるので、なんだか不思議な感じではあります。空気感としても、そこまで出る方ではないです。
私が思う大きな問題は、特にアタック部分で顕著なのですが、倍音の出方が変なのかどこかでスパッと切ったような、表面が異様にツルツルでパツパツした音になってしまうことがあることです。これが致命的で、ピアノや弦楽器、金管など幅広いところで見受けられ、かなり違和感を覚えます。これの影響は、強弱あれど広範囲に及ぶせいか、音の芯がやや強く感じられることもあります。これが、音像の形の強調感を演出しているのかもしれません。
また、音量レンジの圧縮感や、質量感もやや一辺倒でどの音も同じ重さに聞こえるような節はある、といった問題点があると思います。
なお、情報量の捌き自体は、値段が少し上の Focal の Clear Mg Pro と比べるとやや落ちますが、少々甘めにこのくらいかなあ、という気はします。音色は上記の変な問題を除けば、やや明るめですが自在感は思ったより感じられます。それから、質感は割と正当な、ざらざらタイプのものがなんとなく出てくるので、ちょっと感心しました。また、音の立ち上がり下がりは速く、金管楽器の妥当性も(上記で指摘した変な部分を除けば)あるように思います。
Clear Mg Proではありませんが、姉妹機のClear Mgについてのレビューはこちらです。
ちなみに、最初のイメージ通り、音量の取りやすさとは裏腹に結構な駆動力を要求するような印象を受けました。試しに別の環境でもいくつか聞いてみましたが、十分でないと環境だと、音像の収束感やグリップ感が少し弱く感じます。それが前評判のような低域の靄りといった印象を持たせやすくするように感じました。
もしかしたらエージングの問題もあるかもしれませんが、私の地力ではわかりませんでした(
ということで、巷の前評判の内容というよりか別の大きな問題があって、買ってはみたもののまともに聴けるジャンルが限られてしまい、バランス重視形の私としては、ちょっと悲しかったです。特にやっぱりクラシックが辛い。まあ、ブログの肥やしにはなったので、いいか……。