2024-04-21
今回はFocal Clear Mgを買って、しばらく使ってみたレビューです。
Clear Mgといえば、兄弟機のClear Mg Proは先に聴いたことがあったのですが、情報量の程よい捌きとバランスの取れた音作りがとても好感の持てるヘッドホンでした。今回は「じゃない」方のバージョンをわざと、どんなもんかなと思って買ってみた次第です。ちなみに、無印とProとでは定価で数万程度の差がついているようですね。
結論から言うと、多少の癖はありつつも、10万円クラスではなかなか良い選択肢ではないかと思いました。正直、同価格帯のものを下手に買うよりは、確実に音楽を楽しめると思います。Proと比べると難しいところもありますが、これはこれでアリかもしれないな、と感じています。なお、Proは、店頭での試聴や他の方の家で聴かせていただいた感想がベースになりますので、確度が落ちる事をご承知おきください。
購入したので、環境は我が家のシステムです。今我が家のシステムは絶賛再点検中でちょっと自信がないのですが、とりあえず書いておきます。
基本的にはPro版と同じく、音のいろいろな要素が程よくそこそこにまとまっているイメージです。特に、質感なんかは特に作る感じがなく出ている気がします。ただし、Proほど情報が見えるような感覚はありません。基本的には、価格から期待される程度の捌き力だと思います。例えば、音像の周りの情報や全体の雰囲気感などの微細レベルの領域や音の密度感があまり感じられません。
また、Proほどニュートラル感があるわけではなく、音色が少し明るく暖かめ、表現自体もやや華やかな方に偏ります。自在感もそれなりです。特に冷たさの表現が苦手なようで、ピアノなどは少し明るくなってしまうきらいがありました。
一方で、音像の安定感はProより優れています。これはバランス接続ができるから、と言うのが大きそうですが、情報の補い方もおそらく一役買っていると思います。なんというか、音色や質感などの連続性を補いつつ出しているように感じられ、そう言う意味での違和感はProより少ないと感じています。また、単純な性能の頭打ちはProより無印の方が早いかもしれませんが、もしかしたら音質の総合的なバランスは、この音像の安定感が助けてどっこいどっこいになるんじゃないか、予想しています(要検証)。
また、(価格なりですが)品位の良さや表現の軽やかさもProより感じられるので、音色や華やかな表現も助けて、演奏が生き生きしてきます。あるいは少しテンションが高いとも言えるかもしれず、正直若干邪魔になることもあるのですが、品位の良さもうまく作用して多くの曲ではまあ楽しく聴ける程度に収まるかなあ、と感じています。
なお、音場に関してはUtopia SGよろしくヘッドホンなりの音場で、特に目新しいことはありません。
と、こんな感じのイメージです。この値段帯のヘッドホンは、基礎性能としては明確な向上を感じ始めるものの、明確に考慮できてないと音の要素や明らかにおかしい欠点を感じることが結構あるのですが、このヘッドホンはそれが少なく、確かに多少の偏りこそはあるものの、割と安心して聴くことができています。とともに、この安心感はあくまで「ある程度のところでやっとバランスが整った」というだけだな、とも感じています。
つまり、真面目に作ったハイエンドヘッドホンはこのバランスを保ったまま研ぎ澄まし、ステップアップをした音を鳴らすことで、ユーザーにより深く高いレベルで音楽を提供できているな、と感じたということです。値段とは残酷……。しかし、それこそがメーカーがさまざまな努力を積み重ねた証なのだから、ユーザーはそれをなるべく素直に受け取りたいし、真面目に作られたものをきちんと評価できるようになりたいものです。