2024-02-12
今年はイベントに参加したら、その感想も軽くまとめておこうかなと思います。イベントの試聴は普段より確度が低くなるのでどうかなあ、とも思っていたのですが、まあ更新頻度を稼げ……ゲホッゲホッ、失礼。ネタとしてはありかなあ、ということで思い直して、筆を取っています。
ということで、去る2024年2月10日に行われた、冬のヘッドフォン祭 mini 2024に行ってきました。春秋の本祭に比べると規模は小さいものの、結局何だかんだと聴きどころはあって、楽しい経験になりました。また、お世話になっているフォロワーさんともお会いして率直に意見交換をすることもでき、有意義でした。知り合いが増えるとこういうイベントは半ばオフ会のような様相も呈してきますね。それも醍醐味の一つかもしれません。
今回試聴させていただいたのは、以下のブースです。
- Austrian Audio
- オーディオみじんこ
- ESOTERIC
- Timeload
- final
それぞれについて約10分前後の試聴をしました。いつもほどの確度(いつもも結構アレですが___)ではありませんが、軽くメモしておくと次の通りになります。
Austrian Audio
ここでのお目当ては、発売がまだされていないFull Score One ヘッドホンアンプです。構成はADI-2 Pro FS + Full Score One HPA + The Composerバランスです。この組み合わせを推しているようですが、制作界隈ならともかく、リスニング向けにはもっと性能の良いDACを使って、HPA自体のポテンシャルを確かめたくなるところです。
音としては、ADI-2の性能をベースにしつつも、質感や音色の飛びや硬直感をなんとか頑張って滑らかに補おうとしているようなイメージでした。音色自体は少し明るめに持ち上げているように思います。ただ、どうしてもDACから情報量が出てこないので、辛いところです。この環境であれば、The Composerの独特の不安定感(個人的には間引き方が櫛上だからだと思っていますが)は感じにくく、音像が安定しているように聞こえます。駆動力はあまり分かりませんでしたが、MSB Premier HPAでのHPの鳴りから想像するに、普通くらいのように思います。
オーディオみじんこ
実はここの製品を聴くのは初めてでした。今回は、NOCTURNEという新作のヘッドホンリケーブルを売り出していたようなので、聴いてみました。構成はChord Blu Mk II + Chord Hugo TT2 + OCTAVE V16 Single End + Focal Utopia SGのようです。
音は残念ながら、非常に厳しいものがありました。最初に弦楽器の独奏を聴いて音色が異様に燻むので何事かと思い、リファレンスにしているというCDをかけていただいたのですが、音色が全て消し炭のように燻み、上の方の帯域/倍音領域が出ておらず、Hugo TT2から想像しうる情報量のない変な滑らかさもなく、音場全体がただただザラついて質感らしきものや微細情報、空間情報とは……と、全体通してメーカーの意図を通り越して、見えてない項目の多さを感じました。とはいえ、日本のガレージメーカーということで、ここは一つこれからの頑張りに期待したいです。
ESOTERIC
整理券制でした。腰を据えて聴いたことがなかったので、楽しみにしていました。構成はメルコのNAS + N-05XD + Utopia SGとK-05SD + G-05 + N-05XD + Utopia SGです。前者はネットワーク、後者はCDで、ヘッドホンはどちらもバランス接続です。
全体として辛口でキリッとしたような印象のする(音のタイミングが制御されている?)音でしたが、N-05XDはオールインワンで80万円であることを考えると、それなりにアリなのではないかな、と思っています。欠点としては情報量があまり出ず微細情報は落ちる、響きなどの伸びやかさがない、音色などの自在性は無い、などでしょうか。逆に良かった点としては、音色や質感に(出ない情報量なりの)きちんとした連続性が保たれており、安定しているところでしょうか。最初に書いた音のタイミングに関しては、情報量が出てくればもっと気になるのかもしれませんが、そもそもの器がこのぐらいなら結構有耶無耶かなあとか思って聴いていました。
Timeload
構成はChord Hugo M Scaler + Chord DAVE + niimbus US5 Pro + Meze Audio Empyreanバランスです。ここはインコネがNORDOSTのODINだったり電源ケーブルもなんだか高そうなものを使っていました。なぜか今回訪問したブースのChord率が高い気がします……。
全体の構成としては、それぞれの苦手部分をうまく補う(というか誤魔化す……)ように構成してありましたが、音像に関する部分がすっぱ抜けていてなかなかエキセントリックな音でした。音像が溶けるように発散しているにも関わらず変な芯は残っているいう不思議なイメージです。位置情報などありません。わたしは音像に要素を触感、立体感、収束感、残響感、芯の強さ、安定感、中や周りの情報との区別、空気感などの微細情報、立ち上がり下がりの速さ、音像サイズ、音像同士の位置関係と焦点の合い方、……などといったような観点で見たりするのですが、今回の音は、それらの要素がほとんど考慮されていないように思えます。これはある意味すごい。
final
ここはお目当てはD7000だったのですが、順番的に据え置き機材で聴くことができず、SONYのWM1Z初代 + D7000バランス(と比較のD8000)という形での試聴になりました。また、この試聴環境に加えて隣との距離が近く音漏れが盛大に聞こえていて、試聴はかなり困難を極めました……。その辺りの状況もあってわかったことは少なく、残念でした。
わずかにわかったこととしては、特に倍音の出方や質感、そして肝心の情報量的な器に、D8000と比べて微妙な進化を感じなくはなかったということです。D8000での高域の捻れたような音がなかったり、質感の描写でのもう少し細かく出るようになったように見受けられました。D8000よりも駆動力が必要に思えましたが、スペック上も能率など落ちてるようです。D7000というネーミングから性能が落ちてるんじゃ無いかと不安になっている方もいるようですが、経緯はさておき、音を実際に聴いた感じでは(あんな程度ですが)大丈夫そうな気がしています。
という感じで何箇所か回った後、最初に述べたようにフォロワーさんにお会いし、色々と感想を喋ったり最近の界隈に関する情報や意見を交換したりして、有意義な時間を過ごせました。もちろん単独で行っても色々と勉強になると思うので、皆さんもぜひ行ってみましょう。本当は今回の試聴と意見交換を踏まえて考えたことでも話をしようかと思ったんですが、記事が長くなってしまったので、またそのうち。