pontaのヘッドホンブログ

beyerdynamic DT1770PRO 超雑感

2024-01-04

明けましておめでとうございます。本年も当ブログをよろしくお願いいたします。

年末年始の研究ということで、新しいヘッドホンを買ってみました。beyerdynamic社のDT1770PROです。このヘッドホンはヘッドホンオーディオを始めた頃所有していたことがあって、当時は結構気に入っていましたし、割とオーソドックスな鳴りをすると思っていたので、当時の私としてはいろいろと勉強になるヘッドホンでした。その後、別のヘッドホンの購入資金に充てるために売却したのですが、最近久しぶりにこのヘッドホンを見かけて、今の感性と機材で聴くとどうなるのだろう、と気になって購入してみました。

beyerdynamic DT1770PRO

購入レビューなので、環境は拙宅システムです。

総合的に見ると、欠点はあるものの、密閉型ではびっくりするくらいバランスがよく、久しぶりに買ってよかったヘッドホンでした。全体の傾向としては、私の愛機によくある素通しパターンというよりは、ナチュラル志向に振った感じです(ちょっと言い方が難しくて上手い表現が思い浮かびません、すみません……)。

個人的に良かった点は、まず、密閉型にありがちなどこかの帯域(低域が多いかな?)をブーストして音作りをしている感じがしない、ということです。安易な「ヘッドホンの雰囲気」作りを感じにくい、と言えば良いでしょうか。開放型に比べれば確かに少々籠るような音にはなりますが、それ以上にこのヘッドホンは帯域バランスが非常に真っ当だと思います。上下ともにそこまで出るイメージではないですが、普通に聴いていて致命的な破綻を感じませんし、倍音も割と真っ当に出ていると思います。

もう一つ良かった点は、情報量の捌きです。これは私の期待値が低かったというのもあるのですが、拙宅環境ではその密度感を感じやすく、ディテールについても高級機には及ばずとも、情報の連続性を持ちながら表現しているイメージです。密度感で言えば、最初は単純に音が遅いだけかと思ったのですが、だんだん密度感がある時の発音機序に似てきたので、面白かったです(これは後ほど補足があります)。

細かさのベクトルではさすがに微細情報の表現、例えば質感ではややツルッとした感じは否めないであるとか、残響の消えるのが若干速すぎる(細かい音が消えている)等あります。しかし、上述の通り聴感上の帯域バランスや倍音が真っ当なため、質感はツッパるようなことは少なく、問題は少ないと感じています。また、密閉型で外からの音が聞こえにくいため、「出てなさ」は感じにくい気がしています。個人的には、JPOPぐらいの情報量であれば十分かな、という思いもあります。

その他の項目に関しては、音色はベースは少し暗めで温度感温かめですが描きわけがあり、音像が少々収束感強め、音場内での配置や広さはごく普通で頭のサイズを大幅に超えることなく見渡せるイメージ、奥の方に配置された音像がやや厚みに欠け平面的に感じる、というような細々した感じです。空気感もわかる程度に出ています。特にピアノの冷たさが少し出てきているように感じたのは、個人的に驚きでした。

このヘッドホンで指摘すべきクリティカルな問題点は、音が硬いということです。例えば、ピアノの打鍵感や弦楽器の弦がやや硬すぎます。シンセの音もやや硬いです。また、これは全体的なイメージに波及していて、表現として面でも線でも硬直しており、柔らかさを中心に表現のバリエーションが少ないイメージです。個人的には、響きもやや硬めで自然な空気の感覚がないと感じるのは初めてだったので、勉強になりました。また、音の押し引きの表現としてもやや過剰で、ダイナミックな感じになっているとは思います。

ただ、最後の点に関しては、逆にそのダイナミックさが充実感につながる面もあるかな、とは思います。密度感の項でも発音機序の話をしましたが、このような一面もあるので、全てが全て情報量の成せる技というわけではなさそうです。

値段を見て多少考慮した部分はありますが、音の硬ささえ目を瞑れば個人的には結構好感触で、しばらく活躍してくれそうです。特に、根は音の問題ではあるものの、「表現」について切り込めたのは、他の機種と比べて致命的な破綻が少ないからではないかと考えています。

かつて持っていたからバイアスがかかってるのかな、と割と慎重に聴いていたのですが、拙宅で聞く限りは印象は変わらなかったのでちょっと嬉しい年明けになりました。