pontaのヘッドホンブログ

SONY MDR-Z1R 試聴超短評

2023-03-27

ハイエンド帯から少し下がった、少し古いものを掘り進める第 2 弾として、今回はかつて私も使っていたソニーの MDR-Z1R を聴いてみました。あの付け心地は昔から好きで、被った瞬間、当時システム構築に色々と苦労したことを思い出しました。懐かしいです。

環境はいつものフジヤエービックさんの MSB ワクワクセットです。

今回、ケーブルは純正キンバーケーブル 4.4mm を XLR 変換プラグを通して聴きました。これは、試聴機にその 4.4mm ケーブルしかなかったためです。そのため、変換プラグの影響は若干あるかもしれないことをご承知おきください。

このヘッドホン、基本的な帯域バランスや特定帯域での明らかな瑕疵はなく、この点は素晴らしいと思います。音の速さとしてももたつく印象はなく、ダイナミクスも素直には出ています。音色・温度感も概ね中庸なイメージです。自在性はともかくここをクリアできているのは、なかなか優秀だと思いました。

問題点としては、まず、音場空間での定位です。音場状態の広がりに対して音像が曖昧で、スッと立ってきません。位置関係も首を突っ込んだようにはならないのですが、目の前に三角形が現れるでもなく、ややグチャグチャしています。また、音像自体に何か響きのような何かを付加しているのか、音像自体は安定しているのですが、収束感が薄いです。

それから、やはり情報量が現代ハイエンドからすると数段落ちます。これは情報密度、倍音や響き方の階調、細かなニュアンス、ダイナミクスなどいろいろなところで感じます。ただ間引き方はバランスが取れているようで、主旋律と副旋律ぐらいまではわかりやすく把握できるような塩梅になっています。また、質感の荒さも、情報密度の増加に少しはついていけているようで、軽減します。

ただしこのヘッドホンは、音に対して随所に「何か作った演出感」があって、それが捌けてない要素をうまく補えることが時々あります。例えば先ほどの響きもそうですが、空気感、ニュアンスなども当てはまります。「ちょっとウェットな、何か」ぐらいまでしかわからないのですが……。これらが入ると素通し感がなくなり全体的に妥当性が下がるのですが、MSB HPA があったまって情報密度が上がり滑らかさが増してくると、多少の説得力が出てきます。

例えば、このヘッドホンを niimbus US5 Pro でも聴いたことがあるのですが、niimbus の持つ嫌味にならない程度に作られた滑らかさと組み合わせると、たしかにそういう音になるのかなあ、と今にしてみれば思います。ただし、その時の DAC が Violectric V590 のものだったので、それが本物の情報量か作られて補われたものなのか、という判断はその時はつきませんでした。

現代的できちんとした DAC ならわかるのかもしれません。とりあえず、MSB ならわかると思います。

とはいえ、それはあくまで演出であってヘッドホンのポテンシャルではありませんし、ポテンシャルを補えたところで最近のトップエンドには遠く及びません。また、なぜか質感だけ時々異様に出てきて、音像面の細かいザラ付き・毛羽立ちのようなものを感じ取れます。しかし、その周りにあるはずのもっと細かい情報が出てこないのか、不自然さを感じます。他が色々と出てこないのに質感だけ異様なので、これはたまたまというか、なんとなく機械的な不安定さを感じます。

と、こんな感じで、全体のバランスは欠かないものの、ポテンシャルとしてはやはり前時代的で、製品としては音楽自体をちょっと単純化してしまうようなイメージでした。ただ、ポテンシャルの補い方は面白いと思いました。

現世代ではないヘッドホンをブログで 2 つほど取り上げましたが、私が明らかに気になる部分は、まだ確証ではないにしろなんとなく分かってきました。この企画はブログのアクセス数が伸びてくれるので助かるのですが(死)、聴いているとだいたい「だよね〜」って感じになりますね。

過去持っていたこともあって少し情が入ってるかもしれませんが、未熟者ということでお許しください……。